群馬大病院でのドナー事故に関する意見

この記事は随時加筆修正していく予定です。

http://transplant.1-12-bike.net/medical/2006/07/post_19.html
ニュースソースとしては、もっとも公平で簡潔にまとまっていると判断したものを記載しておきます。

この事故、ドナー(肝臓あげる方)に残った後遺症ばかりに注視しがちですが、実際の問題はそれまでの経緯にあると見ています。

まず、レシピエント(肝臓もらう方)が感染症で亡くなっていることから、術後管理に何か落ち度があったと考えました。
また脊髄損傷の原因となった多量の出血は、記事内にもあるヘパリンの投与ミスが直接の原因と読めます。しかし、そこまで重篤な状況に陥ったのは、硬膜外カテーテル(多分硬膜外麻酔に使う管だと思います)が上手く処置できていなかったからと考えました。

つまり、生体肝移植がどうとか, ドナーがどうとかという以前の問題で、技術, 能力, その他様々な要因について、外科手術ができる環境でなかったのではないか、ということです。
「生体肝移植」の「ドナー」であったことに目が行きがちになりますが、起こるべくして起こった事故だと思いました。唯一他と違い、また重要視すべきなのが、健康体であるドナーに重い障害を残したという点だということです。

この件は昨年11月に行われたということで(ぼくと同時期です)公にするまでに約8ヶ月間もあったことになります。
この大学病院では、そこそこの件数の肝移植をこなしているようですから、この間に肝移植の術例もあったかもしれません。外科手術という括りであれば、何十, 何百例はあるでしょう。
その期間、手術を受けることになった方々は当然、このようなミスがあったことは聞かされていないでしょう。知らせるべき情報を隠したまま手術を受けることになっていたのです。

また移植医療を取り巻く状況への影響も、マイナス方向に大きく働きそうです。
この事故を受けてドナーになるのを断念するケースも往々にしてあるでしょう。

そして、世間的にはまたしても誤った認識を植えつけることにもなりそうです。
いわゆる「ドナーカード」は、脳死, 心停止状態における臓器提供の意思を示すカードです。それを骨髄ドナー登録と同列に、生体からの提供意思を示すものと思われている方が多いようです。認識違いに認識違いが重なり、ドナーカードの普及にも影響が出そうです。

これから進められる移植手術は、より慎重な姿勢で挑まれることを願いますが、最悪なのは他にも既に起きていた医療ミスが発覚することです(もちろん隠しておくのはもっと最悪ですが)。
こうなってしまえば、国内で生体臓器移植ができなくなるかもしれません。
他に治療法はない方の最後の手段が臓器移植な訳ですから、進むべき道を閉ざされる方がたくさん生まれてしまいます。

投稿者:1-12-bike 日時:2006年07月25日 22:35 | パーマリンク

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コメント

現在アメリカで移植医療に携わっているものです。真摯に肝臓移植に関する意見を発言されていて、いつも 興味深く拝見しています。ところで、ここでのご意見に関して、少し、コメントさせてください。「まず、レシピエント(肝臓もらう方)が感染症で亡くなっていることから、術後管理に何か落ち度があったと考えました。」とのご意見ですが、生体であれ、脳死移植であれ、成功率は80%前後(1年生存率)で、移植時、または直後の手術に起因する死亡を除けばその死因の多くは感染症によるものです。これは、多くの場合、術後管理に問題があるわけではありません。免疫抑制剤を投与されているため、どうしても、感染症がある程度の割合で、起こってしまいます。この点をご了承ください。
次に「また脊髄損傷の原因となった多量の出血は、記事内にもあるヘパリンの投与ミスが直接の原因と読めます。しかし、そこまで重篤な状況に陥ったのは、硬膜外カテーテル(多分硬膜外麻酔に使う管だと思います)が上手く処置できていなかったからと考えました。つまり、生体肝移植がどうとか, ドナーがどうとかという以前の問題で、技術, 能力, その他様々な要因について、外科手術ができる環境でなかったのではないか、ということです。」とのご意見ですが、硬膜外カテーテルを留置した場合、出血を起こし、同様の合併症を起こすことがある程度の頻度で起こります。少なくすることは大切ですが、ゼロにすることはできません。私自身は、ドナーさんへは、このことを考慮して、硬膜外麻酔は行わずに、静脈麻酔、もしくは経口の痛み止めのみを投与しています。硬膜外麻酔の方が、ドナーさんにとってははるかに快適ですし、静脈麻酔や経口の痛み止めでは完全に痛みをとることはできません。その点は、起こりうる合併症をできるだけ防ぐために、我慢してもらっています。その点から言えば、ドナーさんに硬膜外麻酔をしたことに疑問をはさむことができます。しかし、これも、施設ごとにそれぞれの経験から、決定すべきことで、私が意義を申し立てることだとは考えておりません。以上簡単ですが、コメントさせていただきました。


投稿者: 藤田士朗 | 2006年07月26日 00:23

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