病気腎移植について話す万波誠医師(愛媛県宇和島市で) 病気腎移植などが発覚した宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の泌尿器科部長、万波誠医師(66)が28日夜、読売新聞の単独取材に応じた。「病気腎を使うことは疑問に思っている」「意気揚々とやっているわけではない」と語り、疑問と不安を抱きつつ、目の前の患者を助ける手段として病気腎の利用を重ねてきたことを明らかにした。
万波医師によると、最初の病気腎移植は1990年前後、前任の市立宇和島病院で、小さいがんのあった腎臓を全くの他人に移植した。先例はなく、動物実験もなしで実施したという。
公表しなかった理由は「細々と誰にも知らせずにやろうと思っていた。がんの腎臓を移植したら世間から何と言われるかという恐れもあった」と説明。移植の経緯や術後経過のデータはまとめていないという。
また移植患者の選択について「たまたま病気腎が出てきた時に患者に話す」とし、その場の自分の判断で決めてきたことを認めた。
◆一問一答
万波誠医師との一問一答は次の通り。
――なぜ病気腎移植を始めたのか。
「移植も2度、3度となるとドナー(提供者)のなり手もいなくなる。透析に戻ったら仕事もできず、生活できなくなる人が何人もいた。何とかして移植してやりたいと思った」
――最初のケースは。
「小さい腎臓がんだったと思う。移植のために取ったわけでなく、がん(の腎臓)はいらないから取ってくれと言われた。90年代には良い免疫抑制剤が出て腎移植の成績が良くなり、赤の他人でもうまくいくようになった。『うまくいかなかったら許して下さいよ』と言ってやったと思う」
――事前に動物実験は。
「していない。切除すれば、がんがないのと同じだから、人体実験では絶対ない。腎臓が働かなくても、すぐ取り出すか、透析に戻してあげればいい。悲壮感はなかったし、移植で患者の人生が変わるのでは、というほうが大きかった」
――広く知らせようという考えはなかったか。
「宣伝する気は全くなかった。(移植に使う病気の)腎臓自体が少ない。いつもこれが最後と思っていた。がんの腎臓を移植したら世間にどう言われるかという恐れもあった」
――ネフローゼ患者の両方の腎臓を摘出したのは、海外で症例があったのか。
「両方を摘出する場合があると日本の医師から聞いていた。実際に移植すると腎機能もいい。調べた限りでは、国内でも海外でも症例はなかった。実験的と言われても仕方ないが、そこに患者がいたからやった」
――移植患者を恣意(しい)的に選ぶのは問題では。
「私は今でも病気腎を使うことを疑問に思っており、(待機患者に)順番をつける段階ではない。たまたま(病気腎が)出てきた時に患者と話す。患者が本当に困っていて、私を信用して、失敗しても許してくれる、といった状況を判断して踏み切る。がんの場合、再発したらどうしようという不安もある。意気揚々とやっているわけではない」
――手術後の問題は。
「感染症で亡くなった人はいるが、がんやネフローゼが再発して透析に戻ったとか、動脈瘤(りゅう)の血管縫合がうまくいかずに亡くなったといった例はない」
(2006年11月30日 読売新聞)
投稿者:1-12-bike 日時:2006年12月05日 10:18 | パーマリンク