宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師が執刀した腎臓移植手術の疑惑が発端となり、臓器移植の在り方をめぐって議論が続いている。腎移植を希望する人は多い一方で、臓器移植に関する医療不信が進む恐れもあり、臨床ルールを早急に決定すべきだ。
深刻なドナー提供者不足
同病院でこの九月、腎移植の不正が発覚し、患者が「臓器移植法」で禁じられている利益供与による臓器移植違反で逮捕された。この時の執刀医が万波医師で、同医師は腎臓提供者の身元確認や適性を十分に判定せず、手術に及んだのではないかという疑いも持たれている。
この問題を契機に日本移植学会が調査したところ、生体腎移植を実施する施設十一カ所で倫理委員会が設置されていなかったことが判明、同学会はこれらの施設で直ちに同委員会を設けるよう求めている。ドナーとなる患者本人の同意や、移植される患者の意思の確認が確実に行われるとともに、臓器摘出の妥当性が十分に検討されるような場が必要である。この点からも万波医師の医療行為を追及すべきだ。
一方、腎移植は正当な医療行為であり、それを待ち望む患者は年々多くなっている。それにもかかわらず、ドナー提供者は少ないという現実がある。
わが国で腎移植が適当とみられる透析患者は現在二十六万人に上り、毎年一万人ずつ増えているが、移植の恩恵にあずかるのは年間百五十人足らず。ドナーが欧米諸国に比べはるかに少ないのがその理由だ。
腎移植には、家族、親類から片方の腎臓をもらう生体腎移植と、亡くなった人からもらう死体腎移植がある。生体腎移植では当然、限られた人しかチャンスがないわけで、死体腎の提供について広く啓蒙する必要があろう。死体腎移植は他の臓器移植に比べても、その克服すべき倫理的問題の壁は低いと思われる。現在、透析治療にかかる医療費は年間一兆円で、医療費削減という面からも、移植医療に期待が掛かっている。
また、臓器移植法では、角膜、腎臓以外は生前に承諾がなければドナーの対象にはなり得ないことになっているが、他の臓器についても生前に本人の拒否の表示がなければ、家族からのドナーの申し出に対して検討する余地があるのではないか。
さらに今回、万波医師の執刀で問題になっているのは、病気で機能しなくなり廃棄される予定だった「病腎」を使用した移植についてだ。同医師が手掛けた六百件ほどの腎移植の手術で、かなりの数の病腎が使われていたようで、この中には、ネフローゼや腎臓がん患者から摘出した腎臓もあった。病腎の移植基準についての判断は、研究者や臨床医の間でまちまちで意見が分かれている。
例えば、がんの腎臓の移植でも病変部を取り除けば医学的に見て移植に使用できるという見解もある。ただ、がんの部位やどの程度の大きさまでなら手術可能かについては、医療現場の裁量によっているのが現状だ。昨今の急進的な医療技術の発展に対し、腎臓移植の基準の確定が遅れていると言わざるを得ない。
医療の国際化に課題
脳死・死体腎移植が最も多い米国では、年間約一万三千人が移植を受けており、移植待機者は平均三年で移植が受けられるという。国の文化が違い必ずしも参考にならないが、医療の国際化について、わが国の課題は大きいことを肝に銘ずべきだ。
(世界日報)
投稿者:1-12-bike 日時:2006年12月05日 10:17 | パーマリンク