臓器をお金でやりとりすることは固く禁じられている。そんなことが許されたら、お金に糸目をつけず、どんな手段を使ってでもという人が出てこよう。弱い立場の人が臓器提供を強制される事態も起きかねない。決して許さることではない。
そのあってはならないことが、愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で起きた。昨年九月、生体腎移植を受けた男性患者が、腎を提供した女性に、謝礼として現金や車を渡していた。愛媛県警は、患者と仲介した内縁関係にある女性を、臓器の売買を禁じた臓器移植法違反の疑いで逮捕した。
臓器を必要とする人の数に比べ、提供者は極端に少ない。そのアンバランスが違法な手段を生まないか、などと懸念されてきたことが現実になった形だ。
警察によると、逮捕された二人は腎臓を提供した女性を、仲介した女性の妹と偽って手術を受けさせていた。男性は提供者の女性から借金があり、その返済に現金を上乗せして支払うとの条件で、承諾をとりつけたとされる。提供した女性は「しつこく提供を迫られた」と供述している。
事情はどうであれ、臓器提供のルールから逸脱していることは疑いない。
脳死移植や心停止後の臓器移植は、法律で脳死判定の基準や実施手順が決められている。臓器は、組織の適合性や患者の状態などを考慮し、公平に分配する決まりだ。金銭の授受がないよう、提供者と患者を接触させないルールもあり、これまで大きな問題は起きていない。
一方、健康な人から臓器を取り出す生体間移植は法的な決まりが緩い。
日本移植学会は倫理指針で、提供者を患者の親族と限っている。やむを得ず親族以外の提供が必要なときは病院の倫理委員会が審査するルールだ。ところが、学会も親族かどうかの確認は定めておらず、抜け穴になるとの指摘は以前からあった。
今回、病院側は関係者の説明をうのみにし、親族として手術していた。これまで数十例の生体間移植を行っているのに倫理委員会を設けていなかった。こうした不手際が違法行為を見逃す要因になっていなかったかどうかも、解明してもらいたい。
臓器移植法の施行以来、脳死移植は約五十例と足踏みしている。その間、生体間移植は大幅に伸びた。とはいえ、生体間の肝移植ではドナー(臓器提供者)の死亡や重体事故も起きている。
ドナー対策を行き届いたものにすることが、生体間移植を欠かせない医療としていくための最低限の条件だろう。
神戸新聞ニュース:社説 2006/10/03
投稿者:1-12-bike 日時:2006年11月05日 21:43 | パーマリンク