臓器移植を受けたいが、国内ではなかなか機会が得られない。そこで、やむなく海外で受けるという人が少なくない。
これまで、渡航移植の実態はほとんど分からなかったが、厚生労働省の調査で、初めて一端が明らかになった。
1988年から2005五年の間に、心臓移植を受けた人は85人、肝臓移植は199人、腎臓移植は151人で、延べ435人に上り、ほかに亡くなった人が18人いることが分かった。
わが国では97年10月に臓器移植法が施行され、脳死患者からの臓器移植が可能になった。これまでに脳死下での移植が、40例行われている。
しかし、調査ではっきりしたことは、法施行後も渡航移植が続いているという実態だ。国内に脳死移植を認める法律を持ちながら、臓器を求めて海外へ行かねばならない現状。それが対日批判に結びついているとすれば、見過ごしにはできない。
今回の調査を、日本の移植医療を考えるきっかけにすべきだろう。
特にいま問題になっているのは、国内での臓器不足から、開発途上国での臓器の確保に向かっているとの批判である。
中国での死刑囚からの臓器移植は象徴的な例だろう。最高人民法院の規定で死刑囚からの臓器摘出が認められており、こうした臓器が日本人渡航者にも移植されていると指摘されている。
世界保健機関(WHO)や世界移植学会は反対の立場を表明し、日本の関係医学会に毅然(きぜん)とした対応を求めている。そのことも、今回の調査のきっかけになった。
フィリピンでは日本人対象に腎のあっせんが公然と行われ、「臓器売買」と批判されてきた。背景に貧困問題があり、WHOは人道上、許されないとの立場をとる。
臓器移植法の施行後、心臓移植を求め海外へ渡る人が、むしろ増える傾向にある。小児より大人が多いのが、最近の特徴だ。脳死による移植が思いのほか、進まないという現状へのあきらめやあせりが、海外へ向かわせているともいえるだろう。
わが国は、世界に例のない生体肝移植大国である。脳死臓器移植が実現するまでの“つなぎ”とされた医療が、現状では主流になり、提供者(ドナー)の範囲の拡大が新たな人権問題を招来している。
臓器ごとに直面する問題は違い、一様でない。「助かればいい」では済まされない問題も多く含んでいる。臓器移植という医療行為をめぐってもつれた糸を、一度解きほぐすことが重要だ。
(神戸新聞)
投稿者:1-12-bike 日時:2006年03月24日 17:23 | パーマリンク