臓器移植で最大の難関となっている拒絶反応を抑える新しい治療法を、京都大の小柴貴明・医学研究科特任助教授、坂口志文・再生医科学研究所教授らが開発した。臓器への免疫細胞の攻撃を抑える「制御性T細胞」を患者自身の血液から採取して増やし、臓器移植にあわせ投与することで、拒絶反応が起きない「免疫寛容」の状態に導く。3年以内の臨床試験の実施を目指し、動物実験を今春から始める。
拒絶反応は、移植された他人の臓器を異物と認識した免疫細胞が攻撃するため起きる。移植手術では、拒絶反応を抑える免疫抑制剤を患者に投与するが、免疫反応全体を抑えるため、感染症やウイルス性肝炎再発などのリスクが高まる。
小柴助教授らは、京大医学部付属病院で生体肝移植を受けた患者の中から、拒絶反応が抑えられて免疫抑制剤が必要なくなった患者の血液を調べた。その結果、免疫抑制剤が必要な患者と比べ、免疫にかかわるT細胞の1つの制御性T細胞が増えていることを見つけた。制御性T細胞が攻撃的なT細胞の働きを抑えることで、免疫寛容が導かれるらしい。
さらに、坂口教授らは、マウスから制御性T細胞を分離し、皮膚移植に使った。制御性T細胞を、皮膚を提供するマウスの抗原で刺激して増やした後、別のマウスに投与して皮膚を移植したところ、免疫寛容にできた。
小柴助教授らは、人の血液から、制御性T細胞になる前の細胞を分離して試験管内で増やす技術も確立。今後、人への臨床応用を目指し、自治医科大と共同でブタでの移植実験を進める予定。
小柴助教授は「激しい拒絶反応を抑えたり、C型肝炎患者への肝移植で、肝炎再発のリスクを減らせる。自己免疫疾患や不妊症の治療などへの応用も期待できる」と話している。
(京都新聞)
厚生労働省は17日までに、脳死になった場合に臓器を提供するかしないかの意思が表示できる欄を、約3600万人が加入する政府管掌健康保険(政管健保)の健康保険証に設けるよう、同健保を運営する社会保険庁に要請した。
厚労省臓器移植対策室は「社会保険庁が一歩踏み出してくれれば世の中に対する影響も大きく、期待している」としている。社保庁側は「国民の意見募集などをして慎重に検討する」(医療保険課)としている。
臓器提供意思表示カードはこれまでに1億枚以上配布されたが、実際の所持率は1割程度とされ、いかに普及を進めるかが課題となっている。
(共同通信)
日本移植学会は8日、海外渡航移植の実態を調査する作業班を来年4月に発足させると発表した。アジア諸国では、臓器の売買や死刑囚からの提供が指摘されており、倫理的な問題や危険性について検証するのが狙い。
世界保健機関(WHO)や各国政府にも協力を求め、2~3年後をめどに調査結果をまとめる。
作業班は、学会員や医療機関、製薬会社などを対象にアンケートを実施。海外で移植を受けた患者が国内で免疫抑制剤の処方を求めるケースの有無や、海外の移植施設の実態を可能な限り調べる。
一部の国では、手術や術後の管理が悪いため、移植患者の状態が悪くなることも多いとされている。
(共同通信)
厚生労働省は15日午前、中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)に、06年度診療報酬改定案の全体像を示した。初診料を病院(ベッド数20以上)と診療所(同20未満)で統一することや、小児医療の重点化などが柱で、禁煙希望者への治療に保険を適用し「ニコチン依存症管理料」(初回2300円)を新設する。同日午後、了承の見通し。4月1日から原則実施となる。
06年度改定は、医師の技術料などの「本体」を過去最大の1.36%引き下げることが既に決まっている。全体像はこれを受けたもので、医師不足や偏在が目立つ小児、産科、救急医療や、在宅医療などの重点項目を引き上げる(0.44%増、医療費ベースで1475億円増)一方、慢性病での入院、検査、初診・再診料などの項目を引き下げる(1.8%減、同5990億円減)ことで、メリハリをつけたと厚労省は説明している。
現行の初診料は、病院2550円、診療所2740円。この「格差」は92年度、病院が外来患者を受け入れた際の利幅を薄くし、大病院への患者集中を是正する目的で設けられた。当時は患者の窓口負担がこの1割と低く、初診料が高くても診療所に一定の患者を誘導できたが、その後窓口負担が2割や3割へアップし、逆に患者が初診料の安い病院に集中する傾向が定着した。
そこで同省は初診料の格差をなくして2700円で統一する一方、再診料も病院570円(現行580円)、診療所710円(同730円)と差を縮め、大病院の「3時間待ち3分診療」の是正を図る。これにより、診療所での患者の窓口負担は基本的に軽くなる。
また、小児を24時間診療できる体制を敷き、夜間診療に4500円の加算を設け、心臓移植手術など高度先進医療8技術に保険を適用する。手術などで1食しか食べなくとも一日単位(1920円など)となっている入院時の食事費を一食単位で640円とするなど、入院関連費のカットも並べた。医療機関に医療費の内容が分かる領収書発行義務付けなども盛り込んだ。【吉田啓志】
■06年度診療報酬改定のポイント■
▽病院と診療所の初診料を統一し、再診料の差を縮小
▽禁煙治療にニコチン依存症管理料新設(初回2300円、2~4回目1840円など)
▽24時間体制の在宅療養支援診療所に報酬加算
▽乳幼児深夜加算など小児医療への評価
▽リスクの高い分娩妊産婦の入院基本料への加算新設(1日1万円)
▽臓器移植への保険適用
心臓移植104万1000円/死体肺移植91万8000円/死体肝移植108万6000円/死体すい臓移植88万6000円
▽透析医療の見直し(外来管理料を2万4600円から2万3050円へなど)
▽コンタクトレンズ利用者の眼科検査料見直し
▽入院時食費を1日単位(1920円など)から1食単位(640円など)へ
▽後発医薬品普及に向け、処方せん様式を変更
▽医療費の内容が分かる領収書の無償交付を医療機関に義務付け
▽診療報酬明細書の電算化システム導入などIT化加算新設(30円)
(毎日新聞)
企業の健保組合や市町村が発行する健康保険証の裏面に、臓器提供の意思表示欄を設ける動きが広まっている。
キリンビール健保組合が今月、大手企業で初めて採用。滋賀県は4月から全国で初めて全30市町の国民健康保険加入者に配布する。普及率が約10%と低迷している「意思表示カード」を補うものとして期待される。
脳死や心臓停止に陥った場合の臓器提供の意思や提供臓器の種類を明示しておく意思表示カードは、厚生労働省と日本臓器移植ネットワークが1997年以降、約1億枚を配布した。しかし普及はあまり進まず、脳死臓器提供も年3~9件と低迷している。
カード普及に一役買おうと、キリンビール健保組合は意思表示欄付きの保険証を組合員と家族に計3万8000枚を配布する。
1世帯1枚だった従来の保険証から、プラスチック製で免許証サイズの個人カードに移行する機会に合わせた。「欄の記入は任意だが、組合員が移植医療に関心をもつきっかけになれば」と同社広報部は説明する。科研製薬(東京・文京区)も3月から約4500枚を配る。
既に11市町が採用していた滋賀県は全市町に普及を広げる。従来と同じ1世帯1枚だが、裏面1ページに意思表示欄を家族用に6人分印刷し、家族それぞれの意思が一目で分かるようにした。
(読売新聞)
脳死になった場合に臓器を提供するかしないかの意思が表示できる欄を印刷した保険証の交付を、キリンビール健康保険組合(東京)が8日までに始めた。
日本臓器移植ネットワークによると、一部自治体で国民健康保険(国保)の保険証に欄を設けた例はあるが、国保以外の保険証では初めて。同健保組合は「臓器移植について考えるきっかけになれば」としている。
保険証を1世帯に1枚の紙製から1人1枚のプラスチック製に変更するのに合わせ、意思表示欄の印刷を発案。スペースが狭いため、通常の意思表示カードにある心停止後の臓器提供の項目は省いた。また、機関紙で「あくまで任意。未記入でも構わない」と説明している。発行枚数は約3万8000枚。記入後に考えが変わった場合の修正用シールも作る。
(共同通信)
厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)は25日、心臓移植、脳死肺移植、脳死肝臓移植、膵臓(すいぞう)移植に公的医療保険を適用することを了承した。厚労省は4月から適用する方針。
心臓移植では手術費だけで約300万円に上る患者負担が10数万円に減り、患者や家族には朗報。だが、脳死からの臓器提供は年間数例にとどまっており、提供の増加が引き続き課題となる。
同省によると、手術前の検査費や移植後の投薬費なども合わせ、心臓移植は1000万円以上、肺移植は1000万円近く、肝臓移植は数百万円が必要となる。
高度先進医療が認められる心臓移植でも、患者の自己負担は手術費だけで約300万円。全面的な保険適用と高額療養費制度による払い戻しにより、10万~20万円で済むようになるという。
厚生労働省は11日、2006年度の診療報酬改定の方針を中央社会保険医療協議会(中医協)に示した。厚労省はこの中で、心臓移植、脳死肺移植、脳死肝臓移植、膵臓(すいぞう)移植を新たに公的医療保険適用の対象とするとともに、脳死判定や脳死判定後の患者の管理について、新たに診療報酬の対象とする方向を示した。
臓器移植医療については、これまで生体肝移植や腎移植などが医療保険の対象となっている。厚労省は、高度先進医療の保険導入にあたって技術的な検討をしている高度先進医療専門家会議の検討などと併せ、検討を進める。
また、高齢者の在宅医療を推進するため、新たに「在宅療養支援診療所」(仮称)制度を設け、一定の条件を満たした診療所には診療報酬を手厚くする方針も提示した。
厚生労働省は11日、中央社会保険医療協議会(中医協)に示した2006年度の診療報酬改定の方針の中で、心臓移植、脳死肺移植、脳死肝臓移植、膵臓(すいぞう)移植に公的医療保険を適用するとともに、脳死判定や判定後の患者の管理も新たに診療報酬の対象とする方向を打ち出した。
これらの脳死移植を受ける患者や医療機関の経済負担を減らし、移植の推進、普及につなげる狙い。高度先進医療の保険導入に当たり技術的な検討をしている高度先進医療専門家会議の議論などと併せ、検討を進める。
生体肝移植や腎移植などは、既に医療保険の対象となっている。しかし、脳死での心臓や肺、肝臓などの移植は保険の対象外。厚労省によると、手術前の検査費や移植後の投薬費なども含めると、心臓移植は1000万円以上、肺移植は1000万円近く、肝臓移植で数100万円かかる。